「大阪LOVER」

未分類

1つアドバイスしておくと、「男の運転」に関しては口を出さない方がいい。男という生き物は運転に関して妙なプライドを持っている生き物である。かくゆう私にも何となくは分かる。


金曜日の夜「着きました」と宮川からLINEが入った。外に出るとそこには誰もいなかったが、いつものことなので私は気にせず近くの段差に座り込み宮川を待った。数分後、軽自動車に乗った宮川が現れた。ちなみにこれは私の持論だが、軽自動車は車ではない。軽自動車は高速道路に乗ってはいけない。軽自動車は右折してはいけない。私は助手席に乗り込み「おつかれ」と声をかけた。宮川は「おつかれ」と返す。2人とも疲れてなどいない。宮川という男はこれまで車を出さないことで有名であった。もし出したとしてもその時は、頑張れば自転車で行けるような範囲までしか連れて行ってくれないような男である。その宮川が車を出したというのだからこれは極めてレアなことである。私は久しぶりの助手席に心を躍らせた。



タイヤが僅か2〜3回転した頃、助手席に座っている私に宮川はこう告げた。「今日は一日中コンタクトしてて目がしばしばするから、運転は3時間までで。」こいつまじか。。。先週の金曜の夜、私が眠い目を擦りながら大阪から奈良公園まで運転し、家に帰る頃にはすでに夜が明けていたことなどこいつは忘れている。いや忘れていると信じたい。忘れていなくてこの発言ならこの男はもうチンチンを切り落とすべきだ。絶対に私の目に触れないところでチンチンを切り落としていただきたい。一切声を発さずに切り落とされて欲しい。私は一度メガネを取りに帰るよう提案した。宮川はなんの迷いもなく拒否した。「一回帰ったらもう外出る気なくなるねん。」うるさ。こいつうるさ。ただ単に運転したくないだけやんと確信した。そもそもこんな序盤で目がしょぼしょぼしているということは、家を出る前から分かっていたことなのだから出発前にコンタクトを外しメガネをかけて来ればいいだけの話なのだ。私はもう諦めた。こいつを論破することなど赤子の手を捻るように簡単だが、意味もない。無益な殺生は控えましょう。助手席で躍っていた私の心は一つ目の角を曲がる前に打ち砕かれたのであった。




しかし私も大人しく引き下がるような男ではない。なんとかしてこの男に一矢報いたい。「万博公園の太陽の塔、久々見たいな。今からさ、たまにはいいじゃん。」「そやな。」「万博公園ならここから片道1時間ちょっとやで。」嘘である。大嘘である。悠に片道2時間はかかる。しかし普段から車に乗らず、自転車で行ける範囲でしか生活していない宮川にとってはその嘘を見破る知識は持ち合わせていなかった。宮川は快くとまでは言わないものの承諾し、私の道案内で万博公園へと向かった。




行き道は4回ほど死にかけた以外はなんの問題もなく快適なドライブであった。途中コンビニに寄ったのだが、宮川が車から降りてこないという謎のイベントが起きた。普段私の運転でドライブするとき、コンビニに寄ると意気揚々と降りていき、この入店音はこいつから出てるんじゃないかと勘違いさせるほどのテンションで店内を物色し、ファミチキがないだのマウントレーニアは高いだのコンビニからエロ本が消えただのぐちぐち言いながら楽しそうにコンビニを満喫していた。そんな宮川が車から降りてこないというのはおそらく彼なりのストライキなのであろう。実に滑稽で小規模なストライキだ。挙げ句の果てには頭から突っ込んで駐車した車を反対向きに停め直し、私を急かすようにしてエンジンをかけたまま待っているのである。私は屈しない。私はいつもよりゆっくりと商品を選んだ。ファミチキとコーヒーを買い、コンビニの前でゆっくりとファミチキを食し、車に戻った。宮川は何事もなかったかのように、しかしいつもより荒めに発進した。




万博公園で太陽の塔見たンゴ。




帰り道、宮川はしきりに「目がヤバイ」「光がチカチカしてる」「あぁ、見えない」などと呟いていた。私はことごとくスルーした。私の野生の勘が働いたのだ。これに返事をしてしまえば、なにか取り返しのつかないとんでもない事件が起こる予感がしたのだ。しかし車を走らせて30分程経った頃、私の怒涛のスルーも虚しく宮川から衝撃的な言葉が発せられた。「運転代わってくれへん?」耳を疑った。しかしはっきり聞こえてしまっている。返事せざるをえない。というか人の車を運転するのはさすがに気が引ける。保険とか諸々の心配をする私を尻目に、宮川は「もう無理だ」と呟くと、停めるにはあまりにも危険な路肩に車を停め、シートベルトを外し始めた。私は仕方なく運転席を代わり、ハンドルを握った。数時間前万博公園に行こうと提案した私をぶん殴りたい。私はこの男に対抗するべきではなかった。本当に仕方なく細心の注意を払って運転する私の横で、宮川はさっきまでのテンションが嘘であったかのように「スマホをいじりながら」意気揚々と話していた。光チカチカするんちゃうんかい。宮川「やっぱり車は助手席やな~」

コメント

タイトルとURLをコピーしました